2024 / デビュー作午前四時、街はまだ眠っている
ごぜんよじ、まちはまだねむっている
眠れないまま迎えた午前四時。朝焼けへと変わる街を眺めながら、ひとりの女性が自分の時間を取り戻す、静かな決意の物語。
「朝は、人生を変えない。ただ、昨日までの自分を静かに置いていく。」

特集作品
2024 / デビュー作ごぜんよじ、まちはまだねむっている
眠れないまま迎えた午前四時。朝焼けへと変わる街を眺めながら、ひとりの女性が自分の時間を取り戻す、静かな決意の物語。
「朝は、人生を変えない。ただ、昨日までの自分を静かに置いていく。」
2028 / 長編小説かえりのもり
偶然ふたりきりで森へ向かうことになった母と娘。わかり合うことを目的としない旅の中で、互いの輪郭だけが少しずつ変わっていく。
「答えは森に置いてきた。それでも、人は帰って生きていく。」
2030 / 書き下ろしみずぎわにおいたなまえ
海辺の町で遺品整理を続ける姉妹。波に消える足跡と、呼ばれなくなった名前をめぐる、七日間の物語。
「名前は忘れられても、呼んだ声だけは水の中に残る。」
2032 / 短篇集ひらかれなかったてがみ
届いたまま、読まれなかった十二通の手紙。それぞれの宛先にあった沈黙を、異なる語り手から編み直す連作短篇集。
「読まなかった言葉も、人生の一部になる。」
夜明け前の断章
言葉になる前の感覚を、短い断章として残しています。
エレベーターの閉まる音を聞いた瞬間、肩がわずかに上がった。理由を説明する前に、身体が先に覚えていた。だから私は、言葉にならなかった感覚を、小説の中でいちばん長く留めておきたい。
鏡なら、すでに存在するものを映す。現像液は違う。暗室の中で、見えなかった輪郭だけがうっすらと浮かび上がる。問いは答えを得るためではなく、自分が何を見ようとしていたかを知るためにある。
部屋の隅、引き出しの奥、読み返さないメモ。孤独は空白ではない。一時的な棚なのかもしれない。そこへ静かに置くことで、初めてほかのものと共存できる。
時計の針が進む感覚と、記憶が残る感覚は、同じ方向を向いていない。時間は流れ去るのではなく、身体の底に沈殿していく。触れた瞬間だけ、輪郭が戻ってくる。
人がいなくなったあとも、部屋はしばらくその人の姿勢を覚えている。カーテンの開き方、湯呑みの位置、床板の軋み。家とは、記憶が物になった場所なのだと思う。
電話を切ったあと、会話の内容はすぐに薄れる。それでも、言葉の手前にあった呼吸だけは残る。声は意味を運ぶものではなく、距離そのものなのかもしれない。
作品をめぐる四つの主題
ことばの暗室
物語世界から、まだ名前のない一行を現像します。
忘れたのではなく、思い出す場所を変えただけだった。
栞に残した一行 00
作品年譜
『午前四時、街はまだ眠っている』を発表。
文芸誌でエッセイ「輪郭の手前」を連載。
母娘の短い旅を描く『帰りの森』を発表。
『開かれなかった手紙』で沈黙の十二篇を束ねる。
作家について
小説家
記憶と時間のあわいを書く現代小説家。午前四時の街、帰り道の森、眠れない夜を見つめている。
場所、声、光、手紙、身体に残る感覚。小さな痕跡から、存在の輪郭をたどる。
書くことは、消えてしまいそうなものに、もう一度触れるための行為である。
執筆・寄稿・取材について
contact@shinonome-azusa.jpこのサイトと登場する作家・作品は、ポートフォリオ展示用のフィクションです。